オーディオの凋落について考えてみた

皆さん、音楽は聴きますか?

こんにちは、オジサンです。

皆さん、音楽は良く聴く方でしょうか?車の中、出勤途上の電車の中、家の中等、様々な場面で音楽を聴いていると思います。今ではスマホに記録した音楽をイヤホンやヘッドホンで聴いている若者を良く見掛けます。では、音楽を集中して聴いた時間は、今年どのくらい有りましたか?

集中して聴く方法は人それぞれで、家のスピーカーの前で頭を垂れて聴く人もいれば、イヤホンやヘッドホンで聴く人もいると思います。

1970年代のオーディオ

オーディオ全盛の時代と言えば、1970~80年代がすぐに頭に思い浮かびます。この時代(1982年まで)はアナログしか手段がなく、レコード、テープ、FM放送等がソースの中心でした。オーディオ好きな人と話をする時「板ですか?紐ですか?」なんて質問を受けた事も度々です。板は「レコード」、紐は「テープ」を指しますが、オジサンは「板」専門でしたから常に「板です」と答えていました。

紐をやられていた方は、FM放送のエアチェック(録音)派と自家録派がいて、エアチェック派の方はN響のライブ放送(実況放送)辺りを、自家録派の方は思い機材を抱えて鳥の鳴き声やSLの走行音等を録っていたと思います。中には自分のおしっこが地面に落ちる時の音を録音して、数百万円もする様な装置で再生し、「リアルだねぇ」と悦に入っていた人も居るようです(ちょっと悪趣味ですねぇ)。そう言えば、SLの走行音やF-1の走行音等のレコードも出ていましたねぇ。オジサンは聴いた事が有りませんでしたが・・・。

それでも、紐専門と言う方は比較的少なかったと思います。紐をやりながら板も楽しむのが普通で、「テープだけしか興味がねぇ」と言う方はそれほど居なかったと思います。レコードからカセットテープにダウンロードして、車の中で楽しんでいたのもこのころですねぇ(オジサンが一昨年まで乗っていたOPELにはカセットが付いていた)。

オーディオ全盛の1970年代、秋葉原辺りに行けば、内外の有名メーカーが作った超高級品から、オジサン辺りでも買える様な庶民的価格のモノまで、多くのオーディオ製品を体験する事が出来ました。当時ビジュアルは一般的では有りませんでしたので、ピュアオーディオだったのですが・・・。大体当時は「ピュアオーディオ」なんて言葉もなく、オーディオは全て音楽(おしっこの落下音も音楽か?)を聴くモノでしかなかったのです。「ピュアオーディオ」なる言葉が出てきたのは、ビジュアル(映画など)の音を家でも映画館張りに聴きたい人が増えた1980年代末だったと思います。(おそらく大型TVが市場に出てきてからではないでしょうか)

レコードを楽しむために・・・

今の若い方は、ほとんどの方がデジタル世代(1982年以降生まれで、今年32歳にならた方より若い方)でしょうから、レコードなんて見た事も無いと言う方が多いと思います。

レコードを楽しむためには、レコード(ソース)は勿論ですが、プレイヤーと呼ばれる装置が必要になります。プレイヤーの構成は以下の通りです。

カートリッジ・・・レコード針

アーム・・・レコード針を取り付ける

ターンテーブル・・・レコードを乗せて一定回転で回る

箱・・・それらを収納する箱

これらが必要になります。

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一般的にはこの様な形をしていますが、中には・・・

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こんな形をしたモノも有ります。

一般的には全て(カートリッジを除く場合も有る)がセットになっているモノが多く、オジサンの家に最初に来た「ステレオ」も全て組み込まれた家具調のモノでした。

しかし、オーディオを突き詰めていくと、これらをバラバラのメーカーで揃え、自分で組み立てる様になります。

なぜメーカーがセットで売っているモノでは満足しなくなるか・・・

音を突き詰めていくと段々自分の好みの音というものが出てきます。人によって様々なのですが、低音がブンブン鳴るのが好きな人、バイオリンがむせび泣く様に鳴るのが好きな人、人の声をより美しく鳴らしたい人等々です。そうなると可も無く不可も無く鳴るメーカー製のモノでは満足しきれなくなり、最初はカートリッジ、次はアーム、次はターンテーブル、果てはシェル(カートリッジを取る付ける部品)やカートリッジとアームを繋ぐリード線まで変えたくなるのが人情なのです。

ところが・・・あちらを換えればこちらも換えたくなるのもまた人情で、カートリッジを換えればそのカートリッジに見合ったアームが欲しくなり、アームを換えればそれに見合ったターンテーブルが欲しくなるのです。

オーディオと言う地獄

この様に果てしない買換えを繰り返す事、これを「オーディオ地獄」と言います。オジサンも例外ではなく、一時は「装置の買換えこそ自分の好みの音を手に入れる近道」と勘違いし、前の装置のローンが残っているうちに次の装置のローンを組んでしまうローン地獄にハマっていました。その頃仲間内ではその様な人を「ローンレンジャー」と呼び揶揄していたのですが、オジサンも30代の頃はローンレンジャーの一人として、オーディオのために働く様な日々でした。奥さんはどう思っていたんでしょうねぇ。その事に付いて一度も文句や愚痴を言われた事が無いのですが・・・。

結局「装置の買換えだけでは好みの音が手に入らない」と言う事に気付くのに、オジサンの場合は10年位掛かりました。特にアンプは散々色々試してみましたが、ある程度の品質を持ったアンプであれば、それほど劇的に音質が変わらないと気付くのにBMWの5シリーズが買える程の大金を費やしたと思います。

しかし、オーディオ地獄の血の池で溺れている時や、針の山を登っている時は結構楽しいんですねぇ・・・これが。傍から見れば「なにやってんだか」と言う事になると思うのですが、池で溺れている本人はそこが血の池とは思っていないので、結構楽しんでいるんです。(アホか!)

この様にして、装置を買換え、レコードを買い、散々散財したした挙句に到達するのが針の山の頂上で、下を見れば誰も居ない孤独の山なのです。オーディオとはそうしたモノなのです。

オーディオの凋落に付いて考えてみた・・

オーディオ業界の縮小がいつの頃から始まったかと言う事を考えると、やはり1982年のCD発売の頃に行き着くと思います。勿論1982年当初はCDプレイヤーやCDそのものも売れたでしょうから、ある程度の期間、メーカーはそれなりに潤ったと思います。しか~し、それは一時のカンフル剤の様なもので、一旦各家庭に行き渡ってしまえばCDはともかく、プレイヤーは販売台数が収縮するのは当たり前の話です。

更に、どれほどマニアでもCDプレイヤーの中身までいじる人はほとんど居ないと思いますので、アナログ時代の様にカートリッジを換えたり、アームを換えたりする人は居なくなります。そうなるとCDプレイヤーをポンポン買い替える人もそれほど多くは無いでしょうから、必然オーディオ業界の売り上げは低迷の一途をたどる事になります。

勿論オーディオはプレイヤー関係だけでは有りません。アンプやスピーカーも大切な部品なのですが、アンプやスピーカーはプレイヤー程いじれる部分が有りません。アンプなら真空管を換えたり、コンデンサーを換える程度がオチで、換えるとなれば本体全てを換えるのが一般的です(真空管アンプで自作をされている方は別ですが・・)。スピーカーも然りで、せいぜいケーブルを換えたり、置台を換える程度で済んでしまいます(と言うより、他にやりようがない)。

と言う事で、マニアに限らず少しでもオーディオの音を良くしたいと考える人が最も手を付け易く、それなりの効果が期待できたのがアナログプレイヤー周りだったとオジサンは思っています。レコード再生にハマった事が有る人なら、幾つかのカートリッジは持っていたと思います。

オジサンもその例に漏れず、プレイヤー周りも散々いじって来ました。カートリッジは有に20台を超え、アームも5台を超えています。幸いターンテーブルはGARRARD401を比較的早い時期に手に入れていたので、その後買い替える事は有りませんでしたが・・・。

1,982年のCD発売は、オーディオファンからこの様な楽しみを奪うと同時に、メーカーから売り上げを奪ったのではないでしょうか?

今ではCDそのものの売り上げも瀕死の状態の様で、若い方の多くはネットで音楽配信し、PCで音楽を楽しんでいる様です。いまだにCDを買っているのはオジサン達の様な昭和初期から半ば生まれの年寄ばかりの様です。オジサン達以上の年代がこの世から居なくなったら・・・CDも売れなくなってしまうんでしょうねぇ。

デジタルがオーディオ業界を殺した?

こう言うと大げさな様な気もしますが、実際デジタル化が進むにつれ、それと反比例してオーディオ業界は縮小して行った様な気がします。

確かにデジタルは多くのメリットも生み出しています。オリジナルの音源に非常に近い形で(ロスなく)リスナーの手元に届きますし、音楽を手軽に外に持ち出す(デジタルオーディオプレイヤー等)事も出来るようになりました。更に掃除をしながらでも簡単に音楽が楽しめる環境も作りました(レコードではなかなかそうは行かなかった)。

今オーディオは二極化し、大手家電メーカーが作るオーディオはお手軽志向が強くなっていて、一方の本格オーディオ装置はガレージメーカーが細々(失礼)と頑張っている様なところが有ります。

今から若い方が本格オーディオで音楽を楽しもうと思うと、本当にとてつもない金が必要になります。オジサンがハマっていた70~80年代とは比べものにならないほど機材は高額になっています。

これでは若いユーザーを獲得する事は非常に難しいでしょう。今時の若者の価値観は、オジサン達世代が若い頃とはずいぶん様変わりしています。「スマホ代は月3万でも出すが、車やオーディオのローンは払いたくない」と言うのが今時の若者の価値観で、それは決して間違っていないと思います。価値観は時代と共に変化するのが当たり前で、昭和の価値観を現代に押し付ける気はオジサンには更々有りませんです・・・ハイ。

結局オーディオ業界を殺したのは誰か?と問われれば、「それはオーディオ業界自身」とオジサンは答えるでしょう。その答えが合っているか否かは別として・・・。

オーディオは誰のモノ?

以前にも書いた事が有りますが、オーディオは非常に個人的なモノで、出てくる音に関してはユーザー自身が満足すればそれで良いのです。

秋の夜長、皆さん音楽に耳を傾けましょう。何もせず、ただぼんやり音楽を聴く事も楽しいですが、集中して聴くと今まで聴こえなかった様な音楽が聴こえてくるかも知れません。

音楽の楽しみ方は人それぞれですので、部屋で静かに聴くも良し、ヘッドホンやイヤホンで音楽を外に持ち出すのも良し、仲間と一緒に聴くのも良しです。

ただ、今まで聞き流していた音楽を、今一度集中して聴いてみてください。新しい発見(亡霊の声など)が有るかも知れませんよ~ぅ。